監修:独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター
臨床研究部長 新野 正明 先生

FAQ:ユプリズナに関するよくあるご質問

ユプリズナに期待される効果は?

抗AQP4抗体陽性の患者さんに対して、NMOSDの再発を防ぎます。

ユプリズナの投与方法は?

前投与

インフュージョンリアクションのリスクを低減し症状をコントロールするために、ユプリズナ投与の30分~1時間前に抗ヒスタミン薬及び解熱鎮痛剤を服用し、ユプリズナ投与の30分前に副腎皮質ホルモン剤を静脈内投与にて前投与します。

投与間隔

ユプリズナは通常、成人には、イネビリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを初回、2週後に点滴静注し、その後、初回投与から6ヵ月後に、以降6ヵ月に1回の間隔で点滴静注します(下図参照)。

投与間隔

ユプリズナはどのように効くの?

NMOSDと抗AQP4抗体とアストロサイトについて

ユプリズナの働きの前にNMOSDと抗AQP4抗体とアストロサイトについて説明します。
アストロサイトは脳細胞の1つで、神経細胞が正常に機能するように支持、保護しています。AQP4はアストロサイトと血管をつなぐ部分に強く発現しています。

① NMOSDでは何らかの原因により、自己抗体である抗AQP4抗体が作られます。
② この抗AQP4抗体がアストロサイトと血管をつなぐ部分を敵とみなして攻撃します。
③ 攻撃を受けたアストロサイトは炎症を起こします。

NMSODの作用機序(イメージ図)

ユプリズナを注射すると

① 抗AQP4抗体が作られる経路では、 CD19が発現しているB細胞が関与していることが知られています。
② ユプリズナはCD19に特異的に結合してCD19陽性B細胞を減らします。
③ 抗AQP4抗体が作られなくなり、アストロサイトの炎症を予防します。

ユプリズナの作用機序(イメージ図)

田辺三菱製薬(株):In Vitro薬理作用(社内資料)(M2.6.2.2.1)
田辺三菱製薬(株):In Vivo薬理作用(社内資料)(M2.6.2.2.2)

用語解説

アストロサイト:
中枢神経系の神経細胞は「アストロサイト」という細胞に支えられています。アストロサイトは血管と神経細胞をつなげ、血液から神経細胞に必要な物質を運んでいます。
アクアポリン(AQP)とアクアポリン4(AQP4):
AQPは、水分子を特異的に通す膜タンパク質であり、生体内の水分子移動を介して尿の再吸収や濃縮現象、脳脊髄液等の体液産生と分泌、皮膚の保湿など、あらゆる水の動きに密接に関わっています。哺乳類では13種類のサブファミリーが存在しますが、脳では主にAQP4が発現しています。AQP4は血管周囲や軟膜下のアストロサイト足突起に強く発現し、血管から脳実質、髄液腔に至る水の恒常的な輸送に関わることで、脳内ホルモンの分泌や髄液産生にも積極的に関与していると考えられています。
抗AQP4抗体:
中枢神経のアストロサイトと血管は「足突起」と呼ばれる部分でつながっています、そこには「AQP4」というタンパク質が豊富にあります。NMOSDの患者さんでは血液の中に抗AQP4抗体が流れていて、「AQP」を敵とみなして攻撃してしまいます。
B細胞:
体内に侵入した病原体を排除するために必要な「抗体」をつくる免疫細胞です。特異的な抗原を認識して活性化し抗体を作る細胞に分化します。
CD19:
B細胞の表面に発現する特異的な抗原のひとつ。

治療期間中はどんなことに注意すればいいのですか?

日常生活では体調管理に気をつけてください。

ユプリズナは、抗体製剤(タンパク質製剤)であるため、他の抗体製剤でも認められる、「インフュージョンリアクション」と呼ばれる副作用が認められる可能性があります。
また、ユプリズナは血中のB細胞を減少させる作用があります。B細胞の役割は、体内に侵入した病原体を排除するために必要な「抗体」を作り出し免疫に関わることにあります。ユプリズナにより血中のB細胞が減少すると、免疫機能が低下し感染症が発症しやすくなります。
そのためユプリズナによる治療を開始した後は、次のような副作用にご注意ください。

ユプリズナにはどんな副作用があるのですか?

治療後に注意すべき症状

下記の副作用が現れることがあります。このような症状を感じたら、次の受診日を待たず、すぐに主治医、看護師、薬剤師にお知らせください。早めに適切な処置を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。

インフュージョンリアクション (Infusion reaction)
インフュージョンリアクションとは、薬剤の点滴注射時にみられる副作用のことです。
インフュージョンリアクションのリスクを低減し症状をコントロールするため、ユプリズナ投与の30分~1時間前に抗ヒスタミン薬及び解熱鎮痛剤を経口投与にて、ユプリズナ投与の30分前に副腎皮質ホルモン剤を静脈内投与にて前投与することとされています。
主な症状は呼吸困難、意識の低下、意識の消失、まぶた・唇・舌のはれ、発熱、寒気、嘔吐、せき、めまい、動悸などです。
感染症
ユプリズナの点滴注射後に、感冒や尿路感染などの感染症を引き起こす可能性があります。
主な症状は発熱、寒気、体がだるいなどです。
B型肝炎ウイルス再活性化
これまでにB型肝炎にかかったことがある方やB型肝炎ウイルスに感染している場合、ウイルスの再活性化がみられることがあります。
主な症状は、体がだるい、吐き気、嘔吐、食欲不振、発熱、上腹部痛、白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、体がかゆくなる、尿の色が濃くなるなどです。
進行性多巣性白質脳症(PML)
PMLは多くの人に潜伏感染しているJCウイルスが、免疫力が低下した状況で再活性化して脳内に多発性の病巣(脱髄病巣)をきたす病気です。
主な症状はけいれん、意識の低下、意識の消失、しゃべりにくい、物忘れをする、手足の麻痺などです。

異常を感じた時はどうすればよいですか?

異常を感じた時は主治医にご連絡ください。

ユプリズナによる治療中はインフュージョンリアクション、感染症、B型肝炎ウイルス再活性化による徴候・症状、進行性多巣性白質脳症(PML)などの副作用が発現するおそれがあります。
気になる症状を感じた場合は、次の受診日を待たず、主治医、看護師、薬剤師にご連絡ください。

NMOSDを抱えて仕事をするにはどうしたらよいですか?

NMOSDでも勤めに出られます。

職種については、NMOSDの人に禁止されているものはありません。ただウートフ現象がある場合や、症状が残っている場合は、暑い時期には空調を調節していただくなど職場の環境を考慮してもらったほうがよいかもしれません。
仕事をするにあたってどのようなことを気をつけたらよいか、主治医とご相談ください。
「障害者雇用促進法」によって、国や地方公共団体、一部の企業は「障害者枠」の求人を出しています。NMOSDでも障害が残り、半年程度続いていれば、障害者手帳を取得できる可能性があります。主治医とご相談ください。

:体温が上がると神経症状が一時的に悪化することがある。

周囲へどのように病名告知をすればよいでしょうか?

NMOSDは見た目には何ともないために理解が難しい病気です。

必ずしもNMOSDだということを言う必要はありませんが、入退院を繰り返していたり、見てわかる症状があったりする場合は、無用な誤解を避けるために、病名や病状を伝えておくことも考えられます。
例えば職場では、NMOSDの疾患について周囲に正しく理解してもらい、症状が問題になりそうな場合は、その症状に対してどのように配慮してほしいかを明確にすることをおすすめします。

【説明の仕方の一例】
  • NMOSDは脳と脊髄と視神経の病気であること
  • 症状は運動障害・感覚障害・視力障害など様々であり、人によって大きく異なること
  • 症状は日によって変わることが多いこと
  • 完全には治らないが、再発を予防する薬はあり、病気でない人と同じ生活を送ることができること
  • まだ、病気の原因はわからないが、研究が進んでいること
  • 寿命にはそれほど影響しないこと

妊娠・出産はできますか?

ユプリズナ投与中及び最終投与後6ヵ月間は適切な避妊を行ってください。

授乳はできますか?

ユプリズナ投与中は授乳の継続又は中止を主治医と相談してください。