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NMOSDの治療の流れ
NMOSDの治療には、急性増悪期の治療と再発予防の治療、対症療法があります。
「再発」とは、脳・脊髄・視神経で強く炎症が起こって、神経症状が生じる状態をいいます。
監修:独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター
臨床研究部長 新野 正明 先生
急性増悪期の治療と再発予防の治療、対症療法があります。
NMOSDは治療(再発予防)をしなければ再発を繰り返すことが多く、それにより後遺症が蓄積されることがあります。そのためNMOSDの発作が起こっている急性増悪期では、副腎皮質ステロイド療法や血漿浄化療法などで治療します。この治療で多くの場合は再発を抑えることができます。治療しない場合には1年間に1〜1.5回くらいの割合で再発するといわれており(病初期)、多くの場合は再発する度に障害が増えていきます。
病気の進行とは再発することなく病気が徐々に悪くなっていく状態ですが、NMOSDは進行しないといわれていて、適切な治療で再発を防げば長期予後は悪くありません。最近NMOSDの研究が進んで早期診断と治療ができるようになり、何らかの症状を抱えながらも、普通の生活を送っている人が増えてきています。
MSキャビン. 視神経脊髄炎完全ブック第2版. MSキャビン. 2024. p.64-144
NMOSDの急性増悪期の治療1-3)

副腎皮質ステロイド療法
副腎皮質ステロイドは免疫や炎症を抑える作用を持ち、様々な病気の治療に使われています。
血漿浄化療法
ステロイドパルス療法の効果が十分に得られない場合や、副作用のために大量の副腎皮質ステロイドが使えない場合は、血漿浄化療法が行われることがあります。
血液中から抗AQP4抗体などNMOSDに関連していると思われる因子を取り除くことで病状を改善させる治療です。
免疫グロブリン静注療法
視神経炎の急性期において、ステロイドパルス療法の効果不十分な場合に、免疫グロブリンを大量に点滴する「免疫グロブリン静注療法」が追加されることがあります。
1)日本神経学会. 多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p.150-151
2)日本神経治療学会治療指針作成委員会編. 標準的神経治療:視神経脊髄炎(NMO). 2013; 30(6): p.777-794.
3)MSキャビン. 視神経脊髄炎完全ガイドブック第2版. MSキャビン. 2024. p.69-77
NMOSDの再発予防の治療1-3)
NMOSDは再発を繰り返すのが特徴です。再発を繰り返すと障害が増えていくため、NMOSDでは診断されたらすぐに再発を予防する治療を始めます。
副腎皮質ステロイドの内服
再発予防薬として国内で最もよく使われているのは、飲み薬の副腎皮質ステロイドです。
病状や主治医の考え方によって、副腎皮質ステロイドの量が多くなることもあれば、免疫抑制剤を用いて飲み薬の副腎皮質ステロイドをゼロにすることもあります。
免疫抑制剤(国内承認外):体内の免疫反応を抑制する薬
免疫抑制剤は通常、十分な効果が出るまでに数ヵ月以上かかるため、それまでは副腎皮質ステロイドと併用し、徐々に副腎皮質ステロイドを減らしていきます。
生物学的製剤
免疫抑制剤と飲み薬の副腎皮質ステロイドで再発が抑制できない場合、何らかの理由で免疫抑制剤の使用が躊躇される場合、初期症状が重度で急性増悪期治療への反応性が乏しい場合、今後の再発が生活に著しく支障を来しかねないと想定される場合に生物学的製剤を検討します。
NMOSDで使われる生物学的製剤は、AQP4抗体陽性の人のみが使えます。
1)日本神経学会. 多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p.196-197
2)日本神経治療学会治療指針作成委員会編. 標準的神経治療: 視神経脊髄炎(NMO). 2013; 30(6): p.777-794.
3)MSキャビン. 視神経脊髄炎完全ブック第2版. MSキャビン. 2024. p. 79-118より改変